愛と言う名のデジャヴ
真夜中の玄関 また酒の匂い
「もうしない」と泣く背中 何度目のデジャヴ?
突き放せばいいのに 淹れたてのコーヒー
差し出す手が震えるのは 寒さのせいじゃない
大きな声を出されると 思考が止まるの
あなたの怒鳴り声が あの人の声に重なる
逃げ場のない暗い部屋 膝を抱えてた
「いい子にしてなきゃ」と 怯えていた私が蘇る
わかってる このままじゃダメだとわかってる
それでも私がいないと あなたは生きていけないでしょう?
傷つけられる痛みに どこか安らぎ探してる
愛された記憶がないから 愛し方がわからないまま
幼い日の私がまだ 泣き止まないの
誉められたくて必死だった あの日の作り笑い
今はあなたのために お金を工面してる
「お前が必要だ」なんて 嘘でも嬉しくて
埋まらない心の穴 泥で埋めてるみたい
優しくされると逆に 怖くなるのはなぜ?
いつか裏切られるなら 不幸な方がマシだと
親の機嫌を伺う あの眼差しのままで
今のあなたの顔色 ずっと窺(うかが)っている
離れられない ずるずると鎖を引きずって
「私が見捨てたら終わり」 そんな呪文に縛られて
あなたの中に父の影 憎んでいるのに求めてる
歪んだ愛の形でも 温もりだと信じたくて
傷口を舐め合うように 夜が明ける
本当はわかってる 救いたいのはあなたじゃない
あの日の ひとりぼっちの私
誰かに抱きしめて欲しかった ただそれだけなのに
わかってる それでも手が離せない
私がいないと あなたはどうなるの?
(私がいないと 私はどうなるの?)
交差する記憶の海 溺れたまま
今日もまた 「おかえり」と笑う